食道がん

食道は口から胃へと食物を運ぶ役割を持つ器官で、食道がんは、食道に発生する悪性腫瘍の総称です。食道がんには大きく分けると2種類あり、日本人に多いタイプの”扁平上皮がん”と、西欧諸国に多い”腺がん”と呼ばれる食道と胃の境界部分にできるタイプがあります。一般的に日本で食道がんと呼ばれるがんは扁平上皮がんです。

扁平上皮がん

口の中や舌、喉(咽頭)から食道は扁平上皮に覆われています。その他にも肛門,子宮頸部,外陰部,膣,皮膚が扁平上皮と呼ばれる組織で全て覆われております。その扁平上皮から発生するがんが扁平上皮癌です。扁平上皮がんの特徴は通常の光を用いた内視鏡ではやや赤みが目立つだけですが、NBI (arrow Band Imaging 狭帯域光観察)の条件で観察するとブラウン色に見えます。そのため扁平上皮がんを早期に発見するためにはこのNBIまたはそれに準ずる機能を持った内視鏡で胃内視鏡検査を受けて頂くことが必要です。

腺がん

西欧諸国では食道腺がんが一般的な食道がんになってきています。以前は西欧諸国でも扁平上皮がんが食道がんのほとんどを占めていましたが、近年急激に診断される腺がんが増え、アメリカでは60%以上の食道がんが腺がんと言われています。この腺がんは食道と胃の境界(接合部)にできることが多く、腺がんの発生母地としてはバレット食道が有名です。バレット食道とは食道下部の扁平上皮が、胃の粘膜に置き換えられている状態です。バレット食道の発生要因は逆流性食道炎(GERD)、中心性肥満、食道腺がんやバレット食道の家族歴と喫煙です。

食道がんの症状

食道がんの初期は自覚症状に乏しく、胃内視鏡検査(胃カメラ)で偶発的に発見される場合がほとんどです。食道がんで自覚症状を呈する場合はある程度がんが進行している可能性が考えられます。以下の6つの症状は食道がんの際に認める症状です。これらの症状や後述するリスク因子がある方は積極的に胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けることをお勧めします。

飲み込みにくさ(嚥下障害)

食べ物や飲み物を飲み込む際に違和感を覚える。

胸部の痛み

食事中や食後に痛みを感じることがあります。

体重減少

栄養摂取の減少による体重減少が進む。

声のかすれ

がんが神経を圧迫することで声の変化が生じる場合があります。

誤嚥性肺炎

食べ物が食道を通過できず、逆流し誤嚥の原因になります。

貧血(症状)

腫瘍部分から持続性に出血があると、貧血の症状を呈します

食道がんの原因

食道がんの発症にはいくつかの要因が関連しています。

1. 飲酒

特にアルコール分解能力が弱い体質の方はリスクが高いとされています。

2. 喫煙

長期間の喫煙は食道がんの主要なリスク因子です。

3. 食事習慣

熱い飲み物や辛い食品の摂取が繰り返されると、食道粘膜が傷つきやすくなります。

4. 逆流性食道炎

長期的な炎症が腺がんのリスクを高めます。

5. 胃がんの既往があり、外科手術を受けた方

胃がんの既往があり、外科手術を受けた方は慢性的な胃酸や胆汁の逆流があるため、食道がんのリスクが高いことが知られています。

まとめ

食道がんは日常生活における習慣が深く関与する病気であり、早期発見が鍵となります。特に飲酒量が多い方や飲酒によりすぐ顔が赤くなる方、喫煙者は積極的に胃カメラを受けることが推奨されます。定期的ながん検診と健康的な生活習慣を心がけることで予防や早期治療が可能です。

治療の流れ

内視鏡治療

 初期段階で効果的。内視鏡を用いてがんを切除します。内視鏡的粘膜下層剥離術ESD (Endoscopic Submucosal Dissection)が日本では主流となっています。

手術

がんが広がっている場合、食道の一部または全体を摘出します。

放射線治療

扁平上皮がんは放射線の感受性が高く、放射線治療が非常に有効です。局所的な腫瘍の縮小や根治治療に使用されます。

化学療法

 抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑えます。手術の前後や、放射線治療に併用されることもあります。