一般的にはストレスが原因でできる病気として知られている胃・十二指腸潰瘍ですが、その背景にはストレス以外の要因も影響します。特にヘリコバクター・ピロリ菌との関連は重要なトピックとなっています。胃潰瘍はリスクを理解することで防ぐことができます。積極的に胃内視鏡検査(胃カメラ)で慢性胃炎(萎縮性胃炎)、ピロリ菌感染症の診断をつけることが大切です。
潰瘍の定義は” 粘膜が粘膜筋板を超えて、粘膜下層より深部に組織欠損した状態”を言います。つまり粘膜が掘られ欠損した状態のことです。十二指腸にできる潰瘍が十二指腸潰瘍と呼ばれます。
“No acid, No ulcer” “胃酸が寄与しない胃潰瘍はない”
胃潰瘍の原因は胃酸の影響であると言われています。胃酸と胃粘膜の防御力のバランスが保たれている状況が正常な環境ですが、そのバランスが崩れた時に胃潰瘍や十二指腸潰瘍が起こります。その均衡を崩す要因がいくつか存在します。
胃潰瘍の原因として心理的要因(ストレス)が有名ですが、実は胃潰瘍と心理的要因の因果関係は明らかになっておりません。明確な要因としてはヘリコバクター・ピロリ菌の感染と鎮痛剤(NSAIDs)の使用です。
※NSAIDs関連薬:アセチルサリチル酸(販売名 アスピリン、バファリンなど)、イブプロフェン(販売名 ブルフェン)、ロキソプロフェン(販売名 ロキソニン)、ジクロフェナク(販売名 ボルタレン)などがあります。
ストレスは胃潰瘍との関連があると言われておりますが、はっきりと因果関係が証明されてはいません。いくつかの研究では心理的要因と潰瘍の関係が報告されておりますが、心理的要因が要因なのか結果なのかははっきりしていません。しかし、心理的要因はある程度潰瘍の発症に関係があるのではと思われます。
潰瘍を治癒させる
胃潰瘍の治療の大原則は胃酸の分泌を抑制することです。プロトンポンプ阻害剤(PPI:ネキシウム、タケプロン)やカリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB:タケキャブ)などの胃酸分泌抑制剤を使用します。通常胃潰瘍や十二指腸潰瘍のサイズによりますが、胃潰瘍で8週間、十二指腸潰瘍で6週間治療が必要です。
潰瘍の原因を除去する
ピロリ菌の感染が明らかになった場合は除菌治療を行います。そして鎮痛剤NSAIDsの使用を控えることが必要です。鎮痛剤NSAIDsの使用が必須の方は併用薬として胃酸分泌抑制薬か胃粘膜保護薬を内服することが勧められます。また暴飲暴食やアルコール、喫煙は可能な限り控えて、ストレスを減らした生活を心がける必要があります。